ガスクロマトグラフィーとは
クロマトグラフィ―(Gas Chromatography, GC) は、固定相に接して流れる移動相にサンプルを導入して、固定相と移動相の成分の特性差によって分離を行う手法のことです。 現在は、ガスクロマトグラフィーと液体ガスクロマトグラフィーの2種類が主流で、それぞれ気体と液体を移動相として選択しています。
ガスクロマトグラフィーはサンプルと移動相が気体であることが特長の分析手法で、この手法を用いた分析器をガスクロマトグラフといいます。また、ガスクロマトグラム、ガスクロ、GCなどとも呼ばれます。
1900 年代にミハイル・ツヴェット(1872-1919)がクロマトグラフィーの原理を確立し、1950年代のガスクロマトグラフ開発当初には石油産業を中心に使用されていました。そして原理の確立から100年を超えた現在では、ガスクロマトグラフは石油産業に限らず食品や環境、化学、製薬、法医学など様々なアプリケーションに渡り有効な分析装置として広く使用されています。
ガスクロマトグラフ分析
ガスクロマトグラフは、原則として分析対象が「ガス状の化合物」または「気化する化合物(ガス)」でなければ分析をおこなう事が出来ません。分析作業においては、各分析成分のピークが十分に分離する条件を見つけることが重要です。そのためには、適切なカラムの選択と温度の制御が求められます。LDetek社のガスクロマトグラフは、環境、工業用ガス、石油化学、農業、半導体用ガス、電子産業向けガス、天然ガス、炭化水素プロセス、飲料、食品、医薬、製薬、防爆環境、エネルギー産業など多種多様な産業で多岐にわたるアプリケーションで活躍しています。
①ガスクロマトグラフの分析対象
MultiDetek2で分析が可能なガス種は以下の通りです。*各成分の分析可否は、バックグラウンドガスにより異なります。
希ガス |
Ar アルゴン |
He ヘリウム |
Ne ネオン |
Kr クリプトン |
Xe キセノン |
永久ガス |
H2 水素 |
O2 酸素 |
N2 窒素 |
CO 一酸化炭素 |
CO2 二酸化炭素 |
H2O 水 |
炭素 |
CF4 四フッ化炭素 |
C2F6 六フッ化エタン |
温室効果ガス |
SF6 六フッ化硫黄 |
N2O 亜酸化窒素 |
無機系ガス |
NF3 三フッ化窒素 |
無機/有機系ガス |
NH3 アンモニア |
PH3 ホスフィン |
AsH3 アルシン |
毒性ガス |
NH3 アンモニア |
PH3 ホスフィン |
AsH3 アルシン |
炭化水素ガス |
CH4 メタン |
NMHC 非メタン炭化水素 |
C2H2 アセチレン |
C2H4 エチレン |
C2H6 エタン |
C3H6 プロピレン |
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C3H8 プロパン |
C3H4 プロピン |
C3H4 プロパジエン |
C4H6 ブタジエン |
C4H8 シクロブタン |
C4H10 イソブタン |
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C5H8 シクロペンテン |
C5H10 シクロペンタン |
C5H12 イソペンタン |
C6H12 ヘキセン |
C6H14 イソヘキサン |
C7H14 シクロヘプタン |
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C5H8 シクロペンテン |
C5H10 シクロペンタン |
C5H12 イソペンタン |
C6H12 ヘキセン |
C6H14 イソヘキサン |
C7H14 シクロヘプタン |
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C7H16 へプタン |
C8H16 オクタン |
C8H18 オクタン |
揮発性芳香族 |
C6H6 ベンゼン |
C7H8 トルエン |
C8H18 キシレン |
硫黄ガス |
H2S 硫化水素 |
SO2 二酸化硫黄 |
CS2 二硫化炭素 |
CH4S メタンチオール |
THT テトラヒドロチオフェン |
TBM ブチルメルカプタン |
②ガスクロマトグラフの構成
ガスクロマトグラフの機器構成は、分析対象(目的)によって大きく異なるためカスタマイズ性の高い設計思想と機器拡張性も特長の一つです。
主な構成要素
-
キャリアガス(移動相)
通常、ヘリウムが使用されることが一般的です。キャリアガスは、分析の再現性を確保するためキャピラリーカラム(分離部)に「流量」または「圧力」が一定になるように管理され導入されます。日本においては、ガス源にガスシリンダーを使用することが多いです。
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サンプル導入部(インジェクター)
ガスクロマトグラフは、サンプルガスを気化して分析を行います。サンプル導入部で最適な温度にサンプルガスを気化させるための温度調整機能が必要です。サンプルガスの温度管理が不十分である場合は、分析結果のエラーを引き起こします。分析対象のガスに合わせて、適切なインジェクターを選択する必要があります。
温度が低い |
気化に時間が掛かり、結果としてカラムへのサンプル導入が長引き、ピーク検出があいまいになります。 |
温度が高い |
サンプルガスが熱分解(重合)を起こし、分析の目的が失われます。
*分析エラーの一例です。 |
-
カラム
気化した成分を分離するところセクションです。注入されたサンプル成分とカラムの中の固定相が相互作用(吸着、分配)により各成分を選択的に遅延させることによって検出器までの到達時間に差が現れます= 分離。
カラムの種類 |
パックドカラム |
充填カラム。硝子やステンレスの管に固定相(吸着剤)を充填したもの、または担体に浸透、塗布したもの |
キャピラリーカラム |
中空細管の内壁に、固定相(液相や吸着剤)を塗布または化学結合させたもの |
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検出器
カラムで分離された成分を検出するセクションです。検出器は、サンプルの各成分を検知して信号をデータ処理部へ送信します。検出器の詳細は、下部「検出原理」を確認ください。
-
データ処理部
検出器から送られてきた信号を分析し出力するセクションです。
LDetek社のバルブ
- バルコ社のダイヤフラム式バルブ
- リークがないのでクロマトグラムのベースラインの安定に寄与
- チュービングには1/16インチ
その他の検出原理
一般的な検出器は、下記の6種類にまとめられます。それぞれ検出原理や応答性や得意な検出成分などが異なるため分析成分の種別に応じて、適切なものを選定します。分析器の内部構成(拡張性)によっては、複数の検出器を搭載することも可能です。
FID |
水素炎イオン化検出器 もっとも一般的検出形式 |
TCD |
熱伝導度検出器 |
BID |
バリア放電イオン化検出器 |
DID |
放電イオン化検出器 |
PDHID |
パルス放電ヘリウムイオン化検出器 |
PED |
プラズマ発光検出器 |
PEDとその他のプラズマ放電を利用した検出器の違い
LDetek社のPED(プラズマ発光検出器)の大きな特長は、「PEDが光の強度を検出する」ということです。
一般的なプラズマ放電式検出器は、励起したヘリウムがサンプルガスをイオン化し、イオン化した電子を収集します。PEDは、キャリアガスと不純物のみをプラズマ放電されたセルに導入して、イオン化の際に発光する光の強度を検出しています。
LDetek社のプラズマ発光式検出器PEDの特長は…
- 光学フィルターを使った選択性(セレクティビィティ)
- 出力増幅時にクリーンな信号が得れる(良好なSN比)